2014年2月11日火曜日

Madake

真竹

魚香竿でメインに使用している竹。



普通、バンブーロッドと言えばトンキンケーンと言う中国産の竹を使う。
僕も、最初の一本はトンキンケーンで作った。

トンキンケーンはパワーファイバー(竹の繊維の事)が太く厚い。いいトンキンケーンはずっしりと重い。トンキンケーンで竿を作ると、とても強い竿が作れる。
バンブーロッドに使用するには、とても都合のいい竹なのだ。

なら、なぜ使わないのか?
理由は、きれいなトンキンケーンがなかなか手に入らないから。
どうしても輸入の過程で傷が付いたりする事が多く、使える部分が少ない竹しか殆ど手に入らない。初めてトンキンケーンを扱っているショップに行った時に、思っていたより汚くて、びっくりした記憶がある。

僕は京都育ちだ。
子供の頃から、近所の竹藪で遊んでいたし、祖父に連れられて筍掘りに行ったりしていた。そのせいか、竹は綺麗なものという潜在意識があるのかもしれない。
竹藪は本当に綺麗なのだ。よく嵐山なんかの写真でご覧になった事もあると思う。僕の実家は嵐山に程近い所にあるので、あの写真そのものをずっと生で見てきたのだ。
トンキンケーンが汚く見えても仕方が無いのかも知れない。

僕の父は、僕が子供の頃は庭師をしていた。
なので、竹垣を作ったりしていたのを見ていたし、竹屋さんにも子供の頃に何度か連れられて行った記憶がある。その時も竹って綺麗だなぁと、感動した記憶が朧気にある。

そんな記憶がある所為か、結局すぐにトンキンケーンを使うのは止めてしまった。

竿作りを初めて間もない頃から、京都の竹屋さんを廻って使えそうな真竹を置いてある竹屋さんを探した。

竹は切ってきて、そのままでは竿作りに使えない。
竹に入っている油分を抜かないといけない。
油分を抜く抜き方も色々あるのだが、中には竿作りには使えない様になる抜き方もある。
最初はそれが分からなくて、一本一万円もした竹が使えなかったなんて、笑い話にもならない事もあった。色々、試した上で使えそうな竹はなんとか見つける事ができた。

ただ、真竹はとても綺麗なのだが、竿にするには厄介な点もいくつか有る。

まず、トンキンケーンに比べるとパワーファイバー層が細く薄い。なのに、ピス層と言って柔らかくて使えない部分はトンキンケーンより多いのだ。
それに、節もトンキンケーンに比べるととても高い。正直、曲がり直しの時は嫌になる位だ。
まだある。せっかく曲げ取りをしても放っておくと、すぐにまた曲がりが出る。なので、何回も曲げ取りを行わないといけない。

ここまで、書いていて「じゃあ、なんで真竹なんか使うの?」と、思った人もいるだろう。

理由は軽くてしなやかだから。
もちろん、綺麗だからというのも大きな理由。竿に仕上げた時の綺麗さは段違いだ。
どうしてもパワーファイバーが細く、層が薄いせいでトンキンに比べると弱くなってしまうのだが、圧倒的に軽く、深く曲がる。

僕が作りたい竿は、使ってくれるユーザーさんが笑顔でいられる竿。
笑顔でいる為には、使っていて楽しくないといけない。重くて、一日使うのがしんどい様な竿だと笑顔になんかなれないし、固い棒のような竿だと振るのがしんどくて疲れてしまう。それに、せっかく魚を掛けても、全然曲がらないような竿は使っていて面白く無いから笑顔になれない。そうやって考えると、真竹の方が都合がいいのだ。

真竹で作った竿はとても軽い。僕の竿は中空加工も施すので更に軽い。テーパーにもよるのだが、振り重りがしないので、結果一日中、振っていられる。

トンキンケーンで作った竿が太い針金の様な強さだとすると、真竹で作った竿はピアノ線の様なしなやかな強さがある。トンキンケーンの竿で、これ以上曲がったら折れると思うような所まで真竹の竿を曲げても、まだもう一段階、耐える事ができるのだ。

トンキンに比べて弱くなるのは、テーパーを考え直せばいい。(トンキンのデータが全く使えないので、大変ですが。。。)
節が高くて曲げ直しが大変なのは、我慢すればいいだけの事。

そう考えて、作り始めてから直ぐに使う竹を真竹に切り替えて、そのままずっと真竹を使っている。

もちろん、トンキンケーンの竿も頼まれれば作る。
でも、できれば真竹だけを使っていきたいと、今は思っている。